古代ギリシャの聴こえない音楽を知っていますか?

練習方法や研究の紹介ばかりになっていたのでこの記事では「音楽史」の話をしていきたいと思います。

3種の音楽

古代ギリシャ人の音楽観がわかる面白い資料を紹介します。

それはボエティウスと言う人に書かれた「音楽綱要」と言う理論書です。

ボエティウスと言うのは、5〜6世紀に活躍したローマの哲学者でした。

その「音楽綱要」の中で音楽は3種類に分類されています。

それらの音楽は、今僕たちがイメージする音楽とは全く違うので1つ1つ紹介していきたいと思います。

宇宙の音楽

1つめに紹介するのは宇宙の音楽(musica mundana)です。

これは四季の変化や天体の運行を司る秩序のことをいっています。

また天体が動くことによって、人の耳には聴こえていないが音が発生していたのではないかと考えられていたそうです。

人体の音楽

2つめに紹介するのは、人体の音楽(musica humana)です。

これは、人体の音楽の調律が狂うと病気になったり性格が曲がるという考えです。

心身共にバランスが取れていて調子が良い時は、調律があっていると考えられていました。

道具の音楽

3つめに紹介するのは、道具の音楽(musica instrumentalist)です。

これは普段僕たちが思い浮かべる音楽のことです。

道具とは言うものの、楽器だけでなく人の声もこの音楽に含まれていて「音が聞こえる音楽」は全てこれに所属しているようです。

3種の音楽の上下関係

この3種の音楽は宇宙の音楽が1番上位のもので、道具の音楽が1番下位に見られていました。

なぜかと言うと古代ギリシャ人にとって肉体をコントロールする精神の方が上位のものと考えられていたので、肉体で聴く音楽より精神で聴く音楽の方が高度のものと考えられていたからです。

聴こえない音楽としてはジョンケージの「4分33秒」が有名ですが、あの曲は「無」を聴くより、演奏会場内外のさまざまな雑音、鳥の声、木々の揺れる音、会場のざわめきなどを聴くものとされているので「音楽綱要」の分類分けでは道具の音楽ではないかと思います。

音楽が今の形になるまでの様子を、改めて勉強してみると面白いと感じる話がたくさんあるので今後もちょくちょく紹介していくつもりです。

ちなみに高校、大学時代の音楽史の成績は良くありませんでした。

バイオリン講演奏家 長又 允希